「北方諸民族のエスニシィティとアイデンティティ」(2000年10月12−14日)

はじめに

 現在の北方地域は急激な環境的、政治的、経済的変化に見舞われ、北方諸民族の文化は大きく変化しようとしている。この変化は個々の民族や国家の枠にとどまらず、今や国際的な課題として認識されるに至っている。北方諸民族の文化復興運動とアイデンティティ、民族と国家との関係の再構築、人間と自然との関係の再考、民族紛争とその解決、多様な文化の共存と相互理解などは21世紀に課せられた人類共通の課題でもある。
 そこで、本国際シンポジウムにおいては、国際的に第一線の研究者たちによる多様な視点からの研究発表、討論に基づき、北方ユーラシア、日本、北アメリカを含む北方地域における諸民族のエスニシィティとアイデンティティの実態に関する比較研究を行い、北方地域で現在進行している民族と文化の動態を明らかにし、21世紀に課せられた課題に対して民族学的視点から解明することを目的とする。
 さらに、エスニシィティとは何か、アイデンティティとは何か、そして両者の関係はいかなるものかを明らかにすることにより、本国際シンポジウムは最も困難ではあるが同時に最も魅力的で挑戦に値する「人間とは何か」という人類学のより普遍的な課題へのアプローチを提示し、人類学の新たな理論と方法論の構築に貢献するものである。
会議の組織は以下の通りである。
顧問
宮岡 伯人 大阪学院大学
波田 克之介 北海道大学
ユーハ・ペンティカイネン ヘルシンキ大学
ヘンリー・シャープ  ヴァージニア大学
実行委員会
池谷 和信 国立民族学博物館
煎本 孝 北海道大学
岸上 伸啓 国立民族学博物館
佐々木 亨 北海道大学
山田 孝子 京都大学
 なお、本シンポジウムは北海道大学主催、北方学会を支援学会とする。
煎本 孝 山田 孝子 会議議長

プログラム(日程)

10月12日(木)

09:00‐17:00 会議登録(札幌天神山国際ハウス)
09:00‐09:10 会議開会 開会の辞 煎本 孝
09:10‐09:20 歓迎の辞
北海道大学総長 丹保憲仁
札幌市長 桂 信雄

講演発表
セッション1:日本とアイヌエスニシィティとアイデンティティ(09:20‐10:40)

中本ムツ子アイヌ無形文化伝承保存会)「アイヌ文化を継承する」
貝澤耕一(平取アイヌ文化保存会)「アイヌの精神を受け継ぐ」
煎本 孝(北海道大学)「阿寒まりも祭りの創造におけるアイヌの帰属性と民族的共生」

セッション2:アラスカ・エスキモーとカナダ・イヌイットエスニシィティとアイデンティティ(10:40‐12:00)
ジョージ・チャールス(アラスカ大学)「ユピック・エスキモーのエスニシィティとアイデンティティ
アン・フィエヌップ‐リオルダン(アメリカ合衆国国立文書館)「ユピックの文化主義とカリスタ長老会議」
岸上伸啓(国立民族学博物館)「カナダにおけるイヌイットアイデンティティイヌイットであることと資源分配」
12:00‐13:30 昼食

セッション2:(続)(13:30‐14:20)
エディ・ターナーヴァージニア大学)「北アラスカのイヌピアットにおける弁護人類学とこの10年間における民族学の一般的役割」
宮岡伯人大阪学院大学)「環太平洋における危機に瀕する言語に関する日本の考案」

セッション3:北アメリカ・ネイティヴエスニシィティとアイデンティティ(14:20‐15:40)
ハーヴェイ・フェイト(マクマスター大学)「アイデンティティの対抗像:「白人」の政治・文化とインディアンの実践」
大曲佳世(日本鯨類研究所)「西ジェームス湾クリー族のアイデンティティ構築における伝統食の役割」
ヘンリー・シャープ(ヴァージニア大学)「変化する時間」
15:40‐16:00 コーヒー・ブレイク

セッション3:(続)(16:00‐17:20)
ノエル・ディック(サイモン・フレーザー大学)「北部サスカッチワンにおけるインディアン寄宿学校の政治学
ロビン・リディングトン(ブリティッシュ・コロンビア大学)、ジュリアン・リディングトン「デネ・ザのアイデンティティの維持:「私の覚えている物語、それによって生きる」」
井上敏昭(城西国際大学)「グイッチン・ギャザリング:石油開発に対する先住民集会と現代社会における生計活動」
18:00‐19:30 オープニング・パーティー

10月13日(金)

09:00‐17:00 会議登録(札幌天神山国際ハウス)
講演発表
セッション4:北アジアとシベリア諸民族のエスニシィティとアイデンティティ(09:30‐11:40)

ユーハ・ペンティカイネン(ヘルシンキ大学)「北方のエスニシィティとアイデンティティの過程におけるシャマン期」
山田孝子(京都大学)「自然との共生:サハのエスニシィティとアイデンティティ再構築へのメッセージ」
エレーナ・グラヴァツカイア(ウラル国立大学)「シベリア先住民における宗教的民族的復興」
デヴィッド・アンダーソン(アバディーン大学)「ポストソビエト・シベリアにおけるナショナリティと原権」
池谷和信(国立民族学博物館)「トナカイ遊牧の変化の中のチュクチのアイデンティティの継承」
11:40‐13:30 昼食

セッション4:(続)(13:30‐14:50)
呉人 恵(富山大学)「言語的アイデンティティとしてのコリヤーク語の名詞抱合」
ミハリー・ホッパール(ハンガリー科学アカデミー・ヨーロッパ民俗学研究所)「民族的アイデンティティ政治学と今日の北方シャマニズム」
ロベルテ・ハマヨン(高等研究院、パリ大学ソルボンヌ校)「ブリヤート共和国におけるアイデンティティの再構築と「英雄的」千年王国主義」
14:50‐15:10 コーヒー・ブレイク

セッション5:モンゴルと北欧サーミエスニシィティとアイデンティティ(15:10‐17:50) 
ダッシュツェヴェグ・ツメン(モンゴル国立大学)「モンゴル人集団の言語的、文化的、形態的特徴」
阿拉騰(アラタ)(北海道大学)「チャハル・モンゴル人の生態的変化とアイデンティティ
雲 肖梅(北海道大学)「内モンゴルにおけるトゥメト・モンゴル人のアイデンティティ
オーレ・ヘンリク・マッガ(サーミ大学)「ノルウェーサーミにおける文化的権利:過去と現在」
ハーラル・ガスキ(トロムソ大学)「紙の上のトナカイの群の移動:アイデンティティの新しい道を辿る」
ホーカン・ルドヴィング(ベルゲン大学)「言語の熟達とエスニシィティ:サーミの例」
17:50‐18:20 総合討論 煎本 孝(北海道大学
18:00‐19:30 パーティ

10月14日(土)

08:30‐12:00 北海道大学植物園・博物館、北海道大学総合博物館訪問 佐々木 亨(北海道大学
12:00‐13:00 昼食
12:00‐15:00 講演会登録(北海道大学学術交流会館)

特別講演
1. 13:15‐13:45 北方諸民族のエスニシィティとアイデンティティ(煎本 孝 北海道大学
2. 13:45‐14:45 デネ・ザ ファースト・ネーションズ:変化と継続(ギャリー・オーカー, デネ・ザ ファースト・ネーションズ
3. 14:45‐16:00 現代北欧サーミのヨイク詩劇(ニルス・アスラック・ヴァルケアポ,詩人) 
16:00 閉会
17:00‐19.00 歓送会
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