「北方ユーラシアと北アメリカの宗教と生態」(1991年10月14−16日)

はじめに

 周極地方の宗教と生態に関する研究は、従来より旧世界と新世界の両者において、もっとも魅惑的な人類学の一分野となっていました。ここでは、宗教への生態的インパクトも言及されてはいましたが、宗教と生態との間の動態的相互関係に関する体系的分析と理論的貢献は、ほとんど看過されてきていました。
 そこで、宗教―広い意味での自然、社会、生と死に対する人間の認識―と、生態―広義における人間の生活の仕方―との間の関係は、今後探究すべきもっとも挑戦的な課題でありましょう。
 会議の目的は二つあります。一つは北方ユーラシアと北アメリカにおける多様な文化の比較を通して、周極地方の宗教と生態の特徴を再検討することです。他の一つは北方の宗教と生態との間の関係の研究への理論的貢献です。機能的、歴史的、構造的解釈が拡散、あるいは収斂するかもしれません。しかし、その結果は人間の研究一般における理論と方法論への重要な貢献となることでしょう。
 なお、このシンポジウムは国際「北方学会(NSA)」設立を記念する第1回国際シンポジウムであります。私たちは本学会がユーラシアおよび北アメリカの多様な北方文化の研究と国際交流を通して、人類の理解に貢献することを希望しております。

会議議長 煎本 孝
RENENA 1991 Sapporo

会議議長
煎本 孝 北海道大学文学部

実行委員会
池谷和信 北海道大学文学部
煎本 孝 北海道大学文学部
宮岡伯人 北海道大学文学部
浪田克之介 北海道大学言語文化部
山田孝子 北海道大学教養部

学術的助言をいただいた方々
原 ひろ子 お茶の水女子大学女性文化研究センター
大林太良 東京女子大学現代文化学部東京大学名誉教授
渡辺 仁 麗澤大学、元東京大学教授

事務局
北海道大学文学部北方文化研究施設文化人類学部門内

プログラム

10月14日(月)

09:00−17:00 会議登録(北海道大学学術交流会館)
12:00 会議開会
12:00−12:15 開会の辞
12:15−12:30 歓迎の辞(メッセージ)
北海道大学学長 廣重 力
北海道知事 横路孝弘
札幌市長 桂 信雄
12:30−13:00 特別講演(1)葛野辰次郎「アイヌの信仰と生活」
13:00−13:30 特別講演(2)フレデリカ・デ・ラグナ(ブリンマー大学、アメリカ)「周極地域研究の黎明期」
13:30−15:00 北海道大学図書館(北方資料室)訪問
15:00−17:00 北海道大学農学部附属植物園、博物館訪問

10月15日(火)

09:00−17:00 会議登録

講演発表
セッション1 北方とアイヌにおける宗教と生態に関する理論

09:00‐09:30 渡辺仁(麗澤大学)「北方狩猟採集民の動物崇拝:パターンとその生態学的意味」
09:30‐10:00 山田孝子(北海道大学)「宗教と生態の交差域としての動物:アイヌの実例」
10:00‐10:30 ハマヨン, R.N.(エコール・プラテイク、フランス)「シャマニズム、野生の宗教?」
10:30‐11:00 休憩(コーヒー・ブレイク)
11:00‐11:30 スペワコフスキー, A.B.(ソ連科学アカデミー、レニングラード支部ソ連)「動物崇拝と生態:アイヌと東シベリアの実例」
11:30‐12:00 原ひろ子(お茶の水女子大学)「北方カナダのカショゴディネ(ヘアー)におけるジェンダーと生態」
12:00‐12:30 福井勝義国立民族学博物館)理論的討論
12:30‐13:30 昼食

セッション2 アリュートイヌイットにおける宗教と生態
13:30−14:00 ブラック, L.T.(アラスカ大学、アメリカ)「文化動態としての宗教的シンクレティズム
14:00−14:30 ターナー, E. L. B. (ヴァージニア大学アメリカ)「アラスカのイヌピアット・エスキモーの生活上における接触とその結果:生態から宗教へ」
14:30−15:00 サラダン−ダングルーレ, B.(ラヴァール大学、カナダ)「兄の月(タキーク)、妹の太陽(シキニーク)、そして世界の方位(シラ)−北極の宇宙誌からイヌイット宇宙論へ−」
15:00−15:30 休憩(コーヒー・ブレイク)
15:30−16:00 バーチ, E.S. Jr.(スミソニアン研究所、アメリカ)「狩猟民における合理性と資源利用」
16:00−16:30 岸上伸啓(北海道教育大学)「カナダ・イヌイットは如何にしてキリスト教徒になりしか−諸説の紹介と検討−」
16:30−17:00 宮岡伯人北海道大学)「指示詞をとおしてみたユピック的世界」
17:00−17:30 掛谷 誠(京都大学)理論的討論

スピーカーズ・コーナー(意見交換、自由討論、研究者交流)
17:30−18:00 浪田克之介(北海道大学

レセプション
18:00−19:30 百年記念会館、北海道大学

10月16日(水)

講演発表
セッション3 北アメリカ・インディアンにおける宗教と生態

09:00−09:30 シャープ, H.S. (ヴァージニア大学アメリカ)「逆転した供犠」
09:30−10:00 リディングトン, R.(ブリティシュ・コロンビア大学、カナダ)「頭脳の中の道具:北方アサパスカンの生態、宗教、技術」
10:00−10:30 フェイト, H.A.(マクマスター大学、カナダ)「動物を夢見る:自然、狩猟、クリチャニティとの関連における震えるテント−カナダのワスワニピ・クリーにおける宗教的思考の変換−」
10:30−11:00 休憩(コーヒー・ブレイク)
11:00−11:30 煎本孝(北海道大学)「宗教、生態、そして行動戦略:アイヌとデネとの比較」
11:30−12:00 西田正規(筑波大学)理論的討論
12:00−13:00 昼食

セッション4 北方ユーラシアとシベリア諸民族における宗教と生態
13:00−13:30 フルトクランツ, A.(ストックホルム大学、スウェーデン)「サーミにおける宗教と環境」
13:30−14:00 ペンティカイネン,J.(ヘルシンキ大学、フィンランド)「オビ河の冬村におけるハンティのシャマン」
14:00−14:30 佐々木史郎大阪大学)「下アムールとサハリンにおける経済・文化類型と歴史・民族誌地域に関する研究」
14:30−15:00 休憩(コーヒー・ブレイク)
15:00−15:30 大林太良(東京女子大学)「古代エミシの年周期」
15:30−16:00 大塚柳太郎(東京大学)理論的討論
16:00−17:00 煎本孝(北海道大学)総括討論
17:00 閉会
18:00−20:00 歓送会
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