「北方研究からみえる人類学の今日的課題」(2005年5月21日)

(日本文化人類学会第39回研究大会、北海道大学21世紀COEプログラム共催)

はじめに

 日本における北方文化研究は近世以来の長い歴史の上に独自の変遷と展開をとげて来た。研究対象はアイヌ文化から広く北方ユーラシア、日本、北アメリカを含む北方周極地域諸文化へと展開し、研究方法も民俗学民族学から自然誌−自然と文化の人類学−へと変遷し、さらに研究目的も日本人と日本文化の起源を明らかにすることから、「人間とは何か」という人類学の普遍的課題の解明へと変化してきたのである。
 とりわけ、20世紀後半のソビエト連邦の解体を伴うペレストロイカなどに見られるような世界規模での急激な政治的、経済的変化、その結果としての民族間、宗教間の対立と紛争の激化の時代にあって、私たちは北方研究を通して北方文化独自の課題のみならず、人類に共通する課題に直面するのである。北方文化を語ることはもはや地域に限定された課題を語ることを越え、そこからみえる人類学の今日的課題−生態、宗教、民族、言語、国家、エスニシティアイデンティティ、社会、行動、心、進化、紛争と紛争解決、研究の役割など−を語ることなのである。
 このシンポジウムでは、各発表者はそれぞれの視点から広く人間、社会、自然にかかわる課題について発表し、北方研究と人類学の今後の展望を検討したい。
煎本 孝(オーガナイザー)

発表者・演題

  1. 煎本 孝 (北海道大学)司会・ 北方研究の展開
  2. 加藤 忠 (社団法人北海道ウタリ協会・理事長) 研究の社会性、人道性について
  3. 佐藤知己 (北海道大学) アイヌ語研究の課題と展望
  4. 佐々木史郎 (国立民族学博物館) ポスト社会主義時代の北方人類学研究
  5. 池谷和信 (国立民族学博物館) チュクチ研究からみた人類の生態と地球環境問題
  6. 岸上伸啓 (国立民族学博物館) 北方先住民と開発−カナダ・イヌイットの場合
  7. 山田孝子 (京都大学) 文化復興から読む宗教と自然の意味−ハンティ、サハの事例から
  8. 山岸俊男 (北海道大学) 心の文化・生態学的基盤
  9. 中村睦男 (北海道大学・総長) アイヌ・北方文化研究と北海道大学の役割

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